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福島隆壽(4)

最近、「知的遺伝子」とでも言うべきものに興味があります。
文化や芸術の分野で受け継がれていく遺伝子。
とくに、師と弟子の密接な関係のなかで育まれていく遺伝子です。福島隆壽(4)_f0164843_14105118.jpg

たとえば、音楽家やスポーツ選手、
ダンサーや伝統芸能の担い手など、
身体で何かを生み出す人たちの場合は、
師の考え方や理論、技術だけでなく、
歩き方や後ろ姿まで
そっくりになってしまうことがあります。

自分の師から盗めるものは何でも盗んで
吸収してやろうと、
つぶさに観察し真似てきた結果、
他人から見たら、
まるでコピーのように似てしまう。
このように「知的遺伝子」は、受け継ぐ側の
積極的な意志によって
生き残っていくものなのですね。
だから、師は自分のスタイルを殊更に
弟子に押し付ける必要はまったくないのです。
大切なことは、弟子のほうで、
どんどん吸収していってくれるのですから。

では、絵画はどうか。
これは、もうずばり作品のなかに、その遺伝子を見ることができるでしょう。
結局のところ、絵画とは、二次元のなかにあらゆる情報を詰め込んだもの。
描き手の、感覚、思い、性格、ひいては気力、体力までが
如実に表れてしまいます。
そこに否が応でも、描き手が受け継いできた遺伝子が見え隠れするのです。

私自身も、面白い発見をしています。
私の師である新道繁の教えには、
私が体得しようと自分なりにこなしつつも、
未だ、我がものにできたと思えないものがいくつもあるのですが、
それが、私の教え子である佐藤(智子)の絵の中に、
ぼっと現れていることに気付いたのです。
生物学的にいえば、「隔世遺伝」ですね。
こういった発見ができるのは、教師ならではの楽しみだと思います。

もちろん、知的遺伝子は、伝統を受け継ぐだけのものではありません。
生き残らない遺伝子もありますし、
遺伝子自体が進化して、別の遺伝子を生み出すこともある。
突然変異だってあるでしょう。
今回のグループ8の再結成を通して、
どんな遺伝子を見つけることができるか、楽しみにしています。
(完)


福島隆壽fuqu's_website

第94回光風会展巡回展に、福島隆壽の作品が出展されています。
平成20年7月15日(火)〜20日(日)
会場 広島県立美術館 


構成/中原順子
by group_eight | 2008-07-15 09:41 | 光風会とgroup8


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