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福島隆壽(1)

手前味噌になりますが、今、光風会岡山支部は、とてもいい状態にあると思います。
若手の育成が、私のような年配の者が手出ししなくても、連綿として続いている。


福島隆壽(1)_f0164843_13362020.jpg実は、若手をどうやって引き入れ、伸ばしていくかは、
全国の美術団体が抱えている深刻な問題なのです。
そもそも、「絵では食えない」という意識が、
我々の若いころから続いている。
今の若者も、美術方面に進むとしても、
「食べて」いけそうなデザインや工芸に
流れるケースが多いようです。

また、せっかく絵画の道に進んでも、その受け皿がない。
今は、中央だけでなく、中国地方にも
美術系のコースをもった大学が林立していますが、
果たして、若者が卒業後も心置きなく勉強できるだけの
チャンスや環境、師に恵まれているか、
というと決してそうではないのが現状です。

その点、我が岡山支部は、若手がちゃんと育ち、
彼ら自身が年齢の近い次の世代を育てていく、
という土壌ができあがっていると言えます。

「グループ8」がその最たるものの一つでしょう。
今回の展覧会では、いわばグループ8の「一期生」と言ってもいい世代と
20代の新人たちが同じ仲間として参加します。

今年に入って、第43回昭和会展松村賞、第94回光風会展田村一男記念賞、
第9回岡山芸術文化賞準グランプリと、立て続けに大きな賞を受賞し、
乗りに乗っている佐藤智子をはじめ、
第92回光風会展光風奨励賞を受賞した岸本修、
今年の光風会展光風奨励賞を受賞した常原佳子、
出雲北陵高等学校美術コースで主任を務める多忙な生活のなかで
精力的に制作活動を続けている飯塚康弘と、
「一期生」たちは、今、まさに輝かしい業績を上げ、さらに進化し続けています。

また、今回から「30代まで」という年齢制限を設けたことで
「グループ8」を卒業した、一期生の一人、石田宗之の存在も、
二期生たちには、大いに励みになるでしょう。
石田もまた、第36回日展特選、第91回光風会展辻永記念賞、
第6回岡山芸術文化賞準グランプリ受賞など、目覚ましい活躍をしている作家で、
現在は光風会の評議員も務めています。

よく他の支部の方々から「岡山支部の活躍がうらやましい」と
お褒めの言葉をいただきますが、こういう実績を考えると、
まあ、満更でもない(笑)。
そして、また私自身も、こうした、かつては大学でも教えていた教え子たちの
見事な活躍に触発されて、ともに成長させてもらっていると感謝しているのです。

(続きます)


構成/中原順子
# by group_eight | 2008-07-12 11:55 | 光風会とgroup8

佐藤綾花(4)

夫と岡山に来ることに決めるまで、実はとても悩んでいました。
地元の広島で、美術教師の仕事をしたかったんです。
先生になることがずっと夢だったから、
大げさでなく、夫をとるか、美術をとるか、真剣に考えました。
結婚前だったので、しばらくは遠距離恋愛するしかない、と思ったり。
佐藤綾花(4)_f0164843_14431150.jpg
広島では、私にとって目標である先輩が、
やはり美術教師をなさっています。
同じ橋本(一貫)先生についていて、同じく静物画を描かれる方。
性格も、作風も全然違うんですけど、プライベートでも仲良しです。
すごく大好きで、すごく嫌いな女性(笑)。
ずっと尊敬できる、追いつきたい存在として
私の前を走り続けていてほしいという気持ちと、
負けたくない、追いついて追い越してやる、という正反対の気持ちが
私のなかに同居しています。
そんな先輩がいるから、よけいに来岡について悩んだわけです。
結果的には、正しい決断だったと思っていますが。

それにしても、絵を続けていなかったら、
自分はどうなっていただろうと思いますね。
やめようと思ったことは一度もありません。
絵があったから、今までやってこれたのではないかと思うくらい。

非行に走っていたわけではありませんが、
我慢のできない、好きなことしかできない子どもだったんです。
面倒くさい授業になると、屋上に行って昼寝してたりとか(笑)。
中学校のときも、全然勉強できなかった。
美術のコースがある基町高校が難関校だったので、
これではまずいと塾に行かせてもらうようになり、
それから急激に成績が伸びたんです。
分数の計算もできないくらいだったのに(笑)。

それに、小学校のときも中学校のときも、
いつも目をかけてくれる大人に恵まれていたんですよね。
高校では橋本先生との出会いがあったわけだし、
岡山に来ることが決まったら、今度は光風会展の会場で
佐藤(智子)さんを紹介してもらえましたし。
気がつけば、いつもいい流れのなかにいることができている。
本当にみなさんに感謝しています。

この幸運を、ちゃんと制作に生かさないといけないですね。
一生懸命頑張りますので、どうぞみなさん、
仲良くしてやってください(笑)。よろしくお願いします。
(完)


構成/中原順子
# by group_eight | 2008-06-27 23:57 | 8 interviews

佐藤綾花(3)

母校の尾道大学美術学科は、抽象画のスタイルが盛んでした。
これが、また私の苦手な分野。
頭のなかで、いろいろなことを想像するのは好きなんですけど、
それを形にする、表現する、ということができないんですね。
目の前に、実体のあるものじゃないと描けない。
佐藤綾花(3)_f0164843_11213753.jpg
だから大学に入ってからも、
制作は母校の広島市立基町高校に行って、
橋本(一貫)先生の教えを受けていました。
先生の作品は、風景も静物も、本当に繊細で。
「あるものを、あるがままに、自分らしく表現する」
という先生の教えに、少しでも近づくことが
ずっと挑戦している目標なんです。

抽象画にも興味がなくはないのですが、
結局、自分の描きたいものを確実に正確に描ける画力がなければ
抽象化した概念や思いを表現するなんて不可能ですよね。
橋本先生にも、
「あなたたちのやっていることは、
抽象と具象を区別するところまでも行っていない」
と言われたことがあります。
つまり、そんなジャンルにこだわるレベルまで到達していないということ。
私自身も、まだまだ学生の延長上にしかいないと思います。

今はこつこつ頑張って積み上げていくしかない。
周囲から「こうしたらいいよ」と言われたアドバイスを吸収しながら、
少しずつ進んでいきたいと思っています。
実際、昔から、「こういう世界が描きたい」という
スタイルのないタイプでした。
今までやってこれたのは、全部先生方や友人たちの
アドバイスや教えのおかげなんです。


(続きます)

構成/中原順子
# by group_eight | 2008-06-27 01:12 | 8 interviews

佐藤綾花(2)

「グループ8」に出品するために今描いている作品は、
「私のもの」がテーマです。
自分の好きなものばかりを集めてモチーフを組んで
静物画を描いています。
佐藤綾花(2)_f0164843_15494339.jpg

記念日に夫婦で空けたワインのボトル、
4月に蒜山のハーブガーデンで買ってきたリース。
並べている本も、愛読書ばかりです。
村上春樹、伊坂幸太郎、東野啓吾、それから江國香織。
白木の木目も、実は描くのが好きなんです(笑)。

それから、あちこちに引っ掛けたり、載せたりしている
レースも、私のこだわりです。
以前描いた静物画のなかで、倉庫で見つけたレースを
ちょっと載せて描いてみたら、好評だったんです。
自分でも、あの繊細な編み目を描くのが好きで。
それ以来、5作くらいレースをモチーフに使っています。

おかげで、いろいろなレースを集めるようになりました。
随分コレクションがたまりましたよ。
私のレース好きを知っている友人からもらったものもあります。
まだ挑戦していませんが、自分で編んだ、手製のレースを
絵のなかに使えるようになったらいいですね。

高校生のころから一番好きなのは
「鉛筆画で静物をこつこつ描くこと」というタイプでした。
鑑賞するには、ほかのジャンルの絵も好きなんですが、
自分が描くとなると、どうも動きのあるものが苦手で。
ちゃんと、そこに静止していてくれるものじゃないと描けない(笑)。
レンブラントなんか、本当に大好きなんですけどね。

レンブラントといえば、自分の課題は「光と影」。
どうもうまく描けないですね。
広島で、ずっと教えていただいていた橋本(一貫)先生にも、
「影が汚い」ってよく言われているんです。
先生と一緒に展覧会に行かせていただいたときなど、
よく先生が、私より先に進んでいて、後から来る私を
絵の前で待っててくださるんです。
そういうときには、たいてい目の前に影のうまい作品がある(笑)。
「こういうふうに描くんだよ」といつも作品を前に
指導してくださるんです。


(続きます)



構成/中原順子
# by group_eight | 2008-06-16 11:46 | 8 interviews

佐藤綾花(1)

今年の春、岡山に引っ越したのをきっかけに、
光風会岡山支部に入会しました。
佐藤綾花(1)_f0164843_1235459.jpg
そしてほぼ同時に、グループ8のお話をいただいて。
私、今までグループ展に参加したことが
ほとんどないんです。
ひとつだけ、
光風会広島支部のメンバーが中心となっている
「いしがき会」という会には参加してきたのですが、
30人近くの会だし、仲間でやるグループ展というのとは
ちょっと違いますよね。

実は、グループ展には苦手意識があったんです。
とにかく人前で、未完成品を見せるのが駄目なんです。
中途半端な自分を見られたくないという、
どこか完璧主義なところがあって。
そんなこと言ってたら、仲間同士でなんて描けない。
でも、これは私には切実な問題で、
たとえば夫には制作中の姿はもちろん、
料理している姿さえ見られたくないんです。
リビングとキッチンの間をばっちり閉めて、
出来上がりを待っててもらうタイプ(笑)。

こういう性格が、絵の勉強のときも出てしまっていて、
高校の美術コース(広島県立基町高校 普通科創造表現コース)でも、
大学(尾道大学美術学科)でも、
提出していない制作課題が結構ありました。
「あ、これは私には描けない。やめたっ!」って(笑)。
そのかわり、一度集中すると、がーっと描き続けるほうですね。
音楽聴きながら、こつこつ細かいところを描くのが好き。
今は、朝、夫を送り出して、家事を終えたらアトリエに入ります。
夕方にはやめますが、夫の帰りが遅いので、
気がつけば、夜まで描いていたということもあります。

で、夫は帰ってくると、アトリエが気に入っているみたいで、
私が描いているところで、いきなり寛ぎはじめるんですけどね。
そうすると、「ご飯の支度するから」って
私はさっさと片づけはじめてしまうんです(笑)。


(続きます)

構成/中原順子
# by group_eight | 2008-06-10 14:08 | 8 interviews